1970年代の経営危機を経て、関ケ原製作所の創業者である矢橋五郎から経営のバトンを引き継いだ私の最初の仕事は、会社の再建でした。艱難辛苦を経て見出したのは「限りなく人間ひろばを求めて」の理念。その実現のために社員と取り組んだ明るく愉しい生活空間づくり、すなわち工場公園づくりが「せきがはら人間村」の原点です。

緑地や美術館を作ろうなどと、大層なことをはじめから考えていたわけではありません。志を共にする社員がいて、すばらしい作家や作品たちとの出会いがあって、また多くの方々の温かいご支援に背中を押されながら、人間村はゆっくり、少しずつ進化していきました。振り返ると、私自身は「生きるとはどういうことなのか」「生活とは何なのか」を追い続けてきただけのような気がします。

人間ひろばの探究や工場公園づくりは、社員の中に脈々と息づき、現在の「せきがはら人間村」の景色へと結びついています。生活と、アートと、風景。ここで働く人も、ここを訪れる人も自分らしくいられる場所でありますように。今日を生きる喜びを感じ、あなただけの感性がひらく場所でありますように。そう願ってやみません。

最後になりますが、柴原慶一様をはじめ、永年にわたって私どもの活動を支えてくださっている皆様方に心から感謝を申し上げます。そして、次代を担う人たちがセキガハラの景色をどのように進化させていくのか、今後も見守り続けていただけましたら幸いです。